コント「好きなもの」

舞台の上方にスクリーン。中央に学校にあるような机と椅子。一人、こちらを向いて座っている。なにか書いている。

 

A「あはははは。ははは。楽しいなー」
A「あははは」

 

Bが出てくる。

 

B「なんだよ、なに書いてるんだ?」
A「モロッコ」
舞台のうしろにあるスクリーンに、モロッコの白地図が映る。

 

B「なんでそんなもの書いてるんだよ」
A「好きなバンドの名前机に書いたり、ノートに好きな子の名前書いて消したり、そういうことあるだろ?」
B「ある」
A「好きなんだよ、モロッコが」
B「本当か?」
A、沈黙している。
B「お前、なんか、悩みとかあるのか? だっておかしいぞ、モロッコの絵描きながら、笑ってるなんて」
A「笑ってないよ」
B「笑ってたじゃねえかよ」
A「笑ってないよ。微笑んでたんだよ」
B「それじゃお前の微笑みってあれか? モナリザの微笑みやってみろよ、ほら」
A「ははは。あはははは。どうも、モナリザです」
B「そんなわけないだろ。誰なんだよ、それは」
A「なんだよ、好きなものの絵描いて、笑って、なにが悪いんだ」
B「そう聞くと悪くなさそうだけどさ、地図っていうのがな、なんかさ」
A「でも自分の似顔絵描いて笑ってるより良いと思わないか?」
B「まあ、そのほうが怖いけどさ」
A「自分の似顔絵は、描かないよ」
B「うん」
A「自分の似顔絵は!!!! 描かないよ!!!! 絶対!!!!」
B、びっくりしている。
A「……モロッコのほうが、好きなんだ」
A、また、ノートに描き出す。
B「やっぱおかしいよ、お前、好きなもの描いてるって言ったよな。モロッコのほうが、お前、自分より好きなのか。モロッコも大事だよ。でも、モロッコより自分のことを考えろよ。頼むよ」
A「いいじゃあないか、ぼくの勝手だい!」
B「誰なんだ!」
A「あはは。はははは。はっはっは」
B「笑うな!」