スケッチ「広告男」

テレビの画面に、「広告男」というタイトルが出る。

 

路地。男が歩いてくる。サンドイッチマンのように、体の前と後ろに看板をつけている。黒いゴシック文字で「佐藤眼科」とだけ書いてある。

 

歩いてきたAは、広告男とはちあう。

 

A「なんですか、それ」
男「広告です」
A「広告? 眼科のですか」
男「ええ」
A「あなた、眼科の方なんですか?」
男「いいえ。広告です。ほらスポーツ選手がユニフォームに企業やブランドの名前を載せるでしょう。あれです」
A「はあ」
男「わっ!! 犬だ!!!!」
A「え?」

男が走り去っていく。

 

A、首をかしげながら歩き出す。

 

しばらく歩いたあと、犬が吠えている。

 

A、感慨深げに見つめている。

 

コント「父」

父と息子。

父「なあー、しょうたはクリスマス、サンタさんになにがもらいたい?」
子「サンタさんにしか教えない!」
父「そっかあ、じゃああれだ、手紙書くか、サンタさんに」
子「書かない!」
父「どうして」
子「思っただけでサンタさんには伝わるから!」
子「だってさ、字が書けなかったころもね、サンタさん来たもん」
父「そうかー」

 

沈黙

 

父「で、なにがほしいんだ、クリスマス」
子「教えない!」
父「コロッケか? コロッケだろう」
子「ちがうよ」
父「コロッケ、バツと」
メモしている。
子「あ! ずるい、そうやって万物を問いかけるつもりでしょ!」
父「ははは、そんなわけないだろう。しょうたは、二酸化ケイ素は好きか?」
子「先が長すぎるよ。もっと僕の好みとかから寄せていったらいいでしょ、サンタさんより先に知りたいならさあ」
父「お前の好み?」
子「うん」
父「うーん」
子「当てられたらすごいよ。さすがパパだ」
父「自転車か」
子「ブー」
父「イの67番か」
子「ちがうよ、なにそれ」
父「父さん昔、なくしちゃったんだ。イの67番」

 

スケッチ「タイヤ」

1
車内の男。一人。カジュアルな普通の格好。エンジンをかける。

 

ブロロロロロ……

男、あれ? という表情
男、ハンドルを叩いたり、いろいろするが、動かない。

 

カメラが引き、タイヤのない車が映る。

 

2
大都会の夜景。アシッドジャズやヒップホップなど、最先端の、いかす音楽。ぱりっときめた男が出てくる。颯爽とハンドルを握る。海岸が映る。

 

タイヤがない車。

 

3
街なか。歩いている若い女性。クラクションが鳴る。女性が振り返ると男性が車の窓から手を出し、振っている。
男「ミホちゃん!」

 

タイヤがない車。

 

4
車内。怯え切った様子で運転席に座ったA。
A「やっぱり銀行強盗なんて成功するわけないよ!」
B「うるせえ、ここまできてやめられるか!」
C「そうだ、お前の運転技術だけが頼りなんだよ!」
B「いいか、5分で戻ってくる。そしたら最高速でぶっとばせ!」

B、C、覆面を被って出ていく。

A、頭をかかえる。

 

タイヤがない車。